お祝い事で酒樽の蓋(ふた)を割って開けることを「鏡開き」といいます。お正月の新年を祝う席のほか、結婚披露宴や開店・新築祝い、企業の創立記念パーティーなど、新たな出発や区切りに際して行われる人気のイベントです。それにはどんな由来があるのでしょうか? どんな道具を使うのでしょうか?しきたりに決まり事はあるのでしょうか?海外でも家庭で実践できる「鏡開き」のやり方を探ります。
「鏡開き」とは?
1.「鏡開き」の起源
「鏡開き」はもともと、戦国時代、武将が出陣するにあたって味方の気持ちを鼓舞しようと、振る舞い酒をしたことに始まるとの説があります。とはいえ、当時酒の容器としては甕(かめ)などの焼き物が使われており、大型の樽が普及するのは江戸時代になってからとされていますから、この説の真偽のほどは定かではありません。いずれにしても、「鏡開き」が昔から様々な儀式を彩ってきたことは確かでしょう。
お正月にお供えをした鏡餅を割って、食べやすい大きさにすることも「鏡開き」といいますよね。これは地域によって若干異なりますが、1月11日もしくは15日に行われます。こちらも武家で始まった行事なので、切腹を連想させる刃物を使わず、木槌などで割るようになったと言われています。
酒樽の「鏡開き」も、鏡餅の「鏡開き」も、門出に際して健康や幸福を祈り、その成就を願うという意味合いで、今日まで受け継がれてきた日本文化の一つなのです。
2. なぜ「鏡」なのか
酒樽の蓋は形が丸いので、昔から酒屋さんの間では酒樽の蓋を「鏡」と呼んでいました。丸い鏡は「円満」を意味し、縁起の悪い「割る」ではなく、末広がりの「開く」という動詞を伴いました。丸い鏡はまた、「夫婦円満」にたとえられ、結婚披露宴では客人の前で酒樽の丸い蓋を叩いて割り開き、二人の幸せを祈願したのです。
鏡餅の丸い形も「円満」を表すのは同じ。鏡餅を割るのも、新年にふさわしい行事です。
3.「鏡開き」の掛け声とは
「鏡開き」では、「ヨイショ、ヨイショ、ヨイショ―!」の掛け声が一般的です。コロナ禍ではなかなか難しいかもしれませんが、掛け声は大きいほど運が開けるといわれています。簡単な言葉なので、海外でも参加する人全員が協力して声を出すのが良いでしょう。
以上みてきたように、「鏡開き」は「鏡」を開くことにより「運」を開くという意味があり、縁起が良く、喜びの席にまさしくぴったりな趣向だといえます。
「鏡開き」に欠かせない菰樽(酒樽)
1. 菰樽(こもだる)とは
ディスプレイこも樽 寿(鶴亀)
「鏡開き」に欠かせないのが、「菰冠(こもかぶり)」の酒樽。これは、吉野杉で作った木樽に菰を巻いたものです。
はじまりは江戸時代にさかのぼります。江戸では、灘・伊丹の日本酒がとても好まれて、江戸時代後期には江戸で飲まれる日本酒の8割を占めたといわれています。当初二斗樽(36リットル樽)を馬の背に振り分けて陸路で運んでいましたが、そのうちに菱垣廻船で他の商品と一緒に海上運送されるようになり、さらに、運送時間を短縮できる酒荷専門の樽廻船が登場することで、海上輸送が主流に。この頃には、樽のサイズも大きくなって四斗樽(72リットル樽)になりました。樽が大きくなると問題になるのが、酒樽の破損です。荒波から守るために酒樽に菰を巻き付けたのが、菰樽の始まりでした。今でいえば、荷造りする時のプチプチと同じ役割といえましょう。
※菰:まこもや藁(わら)を荒く編んだムシロ
2. ユニークなデザイン
菰には、酒樽を区別できるように、それぞれに銘柄の特徴を表したデザインが施されました。日本独特の色づかいで、ユニークなデザインが多く、広告媒体として装飾に利用されました。
こうした江戸時代の粋なデザインは今の時代にも伝わっており、菰樽は酒蔵や料理店の店頭でPRに一役買っています。海外でも、酒樽の漢字を含むデザインに興味を持つ人がとても多いです。
3. なぜ樽酒は縁起が良いのか
日本では古くから神様に祈願する際に日本酒をお供えし、神事のあとに参列者で酌み交わす習慣があります。樽酒の「鏡開き」は、蓋を割り開くことから「運を開く」という意味を持ち、古くから縁起の良いお酒としてお祝いの席などで振る舞われてきました。大きな酒樽から皆で分け合って飲むことは、「福を分かち合う」素敵な儀式なのです。
ところで、お酒の語源は、一説には「栄える」から「栄え水(さかえみず)」の名が生まれ、その後「さかえ」が「さけ」にとなったと言われています。運を開き、栄える酒を分かち合う「鏡開き」は、喜びのシーンに欠かせないものだといえるでしょう。
酒樽は杉の木でできています。日本固有の樹木である杉は日本文化に深く関わってきました。杉は樹齢2000年を超える木もあるほど長寿の木。「まっすぐに伸びる」という特徴からも、縁起の良さが伺えます。
樽に使われている杉の香りが移り、爽やかな香りと芳醇な味わいが楽しめる点も、樽酒の大きな魅力です。まさに人が集まるお祝いの席にふさわしいお酒といえるのではないでしょうか。
4. 酒樽のサイズについて
菰を巻いた酒樽の容量は、18リットル、36リットル、72リットルが一般的です。1人分を1合枡(ます)に注ぐとすると、日本酒1合は180ミリ・リットルですから、18リットルで100杯分。36リットルで200杯分、72リットルで400杯分の計算になります。樽酒のサイズの呼称として、18リットルは「1斗樽」、36リットルは「2斗樽」、72リットルは「4斗樽」と呼ばれます。
家庭用で使うのに、そんなに大きなサイズは要らないのだけれど……と考えている方に、耳寄りな情報があります。それが、ミニサイズの鏡開き用酒樽です。次に詳しくご紹介しますね。
海外でもお祝いできる「ミニ鏡開きセット」 その使い方と特徴
1.「ミニ鏡開きセット」とは
木槌で菰樽を叩いて開く本格的な「鏡開き」をテーブルの上でコンパクトに楽しめる「ミニ鏡開きセット」は、画期的な商品です。その仕掛けには老舗菰樽メーカーの岸本吉二商店のユニークな技術が使われており、特許取得済みのスペシャルなもの。
お正月やお花見をはじめ、記念日や節目のお祝い、ちょっとしたパーティーなど、どんなお祝い事のシーンでも存在感を発揮して場を盛り上げてくれるので、海外でも重宝されています。
セット本体は、横幅18センチ、縦17.5センチで、約430グラムと軽量。専用の鏡板とミニ木槌、ミニ木杓、それに容量720ミリ・リットルの小さな朱桶が用意されています。全体の発送重量は1キロなので、国内送料は比較的安く、海外から購入しやすいというのも嬉しいポイントです。
ちなみにセットにお酒は含まれていません。日本酒やワイン、ノンアルコール飲料、またはお菓子など、お好みのものをご用意ください。
2.「ミニ鏡開きセット」の使い方
- 飲み物を入れる前に、セットされている朱桶を取り出して水洗いし乾かす。
- 朱桶を菰樽にセットして飲み物(720ミリ・リットル以内)を注ぐ。
- 朱桶の上にまず、付属品のドーナツ型の白いフレームを載せる。
- 白いフレームの上にマグネットで結合した鏡板を載せる。
- 設定が終わったら、参加者全員で元気よく「ヨイショ、ヨイショ、ヨイショ」と掛け声をかけ、3回目のヨイショにタイミングを合わせて、木槌で蓋を割る。
3. 特徴その1:繰り返し使える鏡板
一般的に、「鏡開き」で忘れてはならない重要な準備が、酒樽の蓋を事前に開けておくこと。誤解している人もいるかもしれませんが、しっかり密閉された酒樽の蓋は、木槌で軽く叩いたくらいでは開きません。事前にタガをゆるめ、バールなどで一度蓋を開けてから、樽に載せ直します。それで、セレモニー本番で軽く木槌で叩けば「鏡が開く」と言うわけです。
でも、「ミニ鏡開きセット」の場合はご心配なく。そんな面倒な準備は要りません。鏡板の真ん中を叩くことで勢いよく跳ね上がり、小さくても迫力満点ですよ。鏡板はマグネット式になっているので、繰り返し使用できます。
4. 特徴その2:朱桶にギフトを入れてサプライズ!
朱桶は取り外し可能で、洗って繰り返し使えます。日本酒を入れるのが一般的ですが、ワインやノンアルコール飲料などお好みの飲み物を入れて楽しめます。
飲み物だけでなく、お菓子やプレゼントを詰めることもできるので、子供の誕生会や入学・卒業などのお祝いにも最適です。ゲストに配るギフトを忍ばせておくなど、アイデア次第で様々なサプライズを演出できます。
5. 特徴その3:豊富なデザインのラインアップ
ミニ鏡開きセット 〜土産樽〜 祝言の謡
もとは日本酒の銘柄をPRするために、目立つ色づかいやデザインをあしらった広告ツールだった菰樽。グラフィックデザイナーの斬新なアイデアが加わることで、伝統的な文様もモダンなデザインへと変わります。現代に生きるユニークな日本的アートとして、海外では日本人以外のゲストからも大人気。インスタ映えもばっちりです。
菰樽メーカー、岸本吉二商店について
1. 創業は1900年
引用元:岸本吉二商店のインスタグラムページ
兵庫県尼崎市にある岸本吉二商店(岸本敏裕社長)は、1900年(明治33年)創業の老舗です。創業以来、菰樽の部材である菰縄を作り、日本酒の蔵元に菰樽を提供しています。
同社が運営する「めでたいな.com」は、日本伝統のお喜び文化を多くの人に身近に感じてもらいたいという思いで立ち上げました。数少ない菰樽の製造元として、伝え守っていかなければ残らない未来があると考えているからです。
2. 尼崎という立地
尼崎城
尼崎は、灘や伊丹といった酒どころに囲まれています。江戸時代から農家の冬場の仕事として、菰樽に使われる菰縄づくりが盛んでした。明治時代、農家が作った菰縄を買い集め、集めた菰にお酒の銘柄を刷り込んで蔵元へ納めることを家業としてきたのが、同社です。そして、当時と変わらず、今も一つ一つコツコツと菰縄づくりを続けています。
現在、菰樽の菰縄を作る会社は全国でわずか3社。その中でも一番の大手で、いつまでも作り続けることこそが大切な日本文化を残すことだと考えています。
3. 職人の手作りにこだわる
「ハレの日に使われるものだからこそ、いっそう心をこめたい」と、同社は職人による手づくりにこだわります。
菰樽の材料となる杉は奈良吉野杉・京都北山杉で、樹齢80年以上のものを使っています。菰に使うわらは、背の高いものを厳選しています。さらに、菰への印刷について、昔ながらの印刷手法の復刻に力を入れるほどのこだわりよう。
手づくりのよさは、人の温かさと職人の思いを感じるところです。「代々受け継がれてきたからこそ感じ取ることのできる本物のよさを、手にとっていただきたい」と、岸本社長は強調します。
4.「絶滅危惧種」であっても続ける理由
日本では少しずつ田んぼが減って、菰縄に使うわらが少なくなっています。昔ながらの作り方を守ることは簡単なことではありません。機械も古くなり、メンテナンスが大変です。職人の育成にも長い年月が必要です。それでも、菰樽を使いたいというリクエストがある限りこの文化を残していこうと、岸本社長は決めています。菰樽づくりに誇りを持つ若手も少しずつ増えています。「今我々が守らなければ残らない未来がある」との覚悟で、「絶滅危惧種」であっても、あきらめずに続けていくと言います。
おすすめの「ミニ鏡開きセット」5選+&alpha
1. お正月を祝う~グラフィックデザイナー角和輝氏のデザインから
・ミニ鏡開きセット~土産樽~御来光
価格:7700円
日本の山といえば、誰の心にも浮かぶ富士山。その頂きから昇る朝日は、すがすがしくかつ美しく神秘的な風景です。日本らしさを意識したデザインで、海外でもゲストの注目が集まるのは確かでしょう。
・ミニ鏡開きセット~日本の四季~正月『元旦』
価格:7700円
日本の四季をテーマにしたデザインのうちの一つです。水平線から昇る元旦の日の出を実にわかりやすく図像化しています。
・ミニ鏡開きセット~日本の四季~正月『ハッピーニューイヤー』
価格:7700円
おめでたい紅白幕を「HAPPY NEW YEAR」という文字を組み合わせて表現しています。赤のストライプ風がとてもポップな印象です。
2. 豪華な屠蘇(とそ)飾り付き
・ミニ鏡開きセット 定番とそ飾り
価格:8800円
正月飾りなどに使われる屠蘇飾りを施したタイプです。屠蘇は、邪気を払い、魂を目覚めさせる効用がある祝い酒。飾りには短冊が付いていて、行事によって短冊に文言を記入できるようなっています。鶴の水引についても、ゲストは興味津々のはずです。
3. 人気の浮世絵柄
・ミニ鏡開きセット~土産樽~タイル富士
価格:7700円
日本らしさを意識したデザインでは、海外では浮世絵柄も人気です。北斎の浮世絵「富嶽三十六景~神奈川沖浪裏」をタイル柄で表現しています。
4. ご縁を願う白うさぎ
・ミニ鏡開きセット~ご縁~白兎
価格:7700円
題材は、日本の神話「因幡の白うさぎ」です。縁結びの象徴である白兎が、これからの出会い、広がるご縁を予感させます。グラフィックデザイナー関友梨子氏のデザインです。
5. 寄せ書きで世界にひとつだけの菰樽を
・ミニ鏡開きセット~寄せ書き~THANK YOU(白)
価格:7700円
好きなメッセージを寄せ書きしてプレゼントできるタイプです。「ありがとう」の気持ちをカラフルな風船にのせて、お世話になった人に贈ってみてはどうでしょう。送別会などで重宝しそうです。
6. おまけ:桧枡(ひのきます)について
・干支桧枡 1合5個セット
価格:1733円
新年を祝う特別な演出に、桧が香る伝統的な桧枡はいかがでしょうか? 乾杯の酒器は、海外で日本文化を身近に感じられるものの一つです。2022年の干支、寅がデザインされています。岐阜県産の東濃桧を使って、焼印を一つひとつ丁寧に施してあります。海外でも日本の干支に関心を持つ外国人は多く、説明するのも楽しいですよ。
標準的な1合サイズは、振る舞い酒にちょうど良い大きさです。自然の木の温もりがあって、デザートを入れたりインテリアにしたり、工夫すると幅広い用途で使えるので、お土産にしてもとても喜ばれます。耐久性に優れた素材ゆえ、長年愛用できるのもうれしいポイントですね。
なお、上に挙げた1)、3)、4)の「ミニ鏡開きセット」には、5勺(0.5合)の桧枡2個付きのセットもあります。
・干支カラー枡 5個セット
価格:3850円
絵馬に干支の寅を描いた凝ったデザイン。フルカラー印刷ならではの豊かな表現です。
・干支塗枡【大(8勺)】5個セット
価格:1953円
艶やかな黒と朱を配した塗枡。干支の寅は金色で、とてもゴージャスです。
まとめ
今回は、昔から縁起が良いといわれている日本の伝統行事の一つ、「鏡開き」についてご紹介しました。日本らしさがぎっしり詰まっていて、海外でも幅広い年齢層のゲストに喜ばれる華やかなイベントであることがおわかりになったでしょう。
「鏡開き」の起源や道具、やり方について知ると、海外でもぜひやってみたいと思われたのではないでしょうか。「ミニ鏡開きセット」を使えば、家庭で行うのも難しいことではありません。健康や幸せを願い、参加した人たちが一体となり、温かな気持ちを共有することができますように……。
コロナ禍ではありますが、「ヨイショ、ヨイショ」の元気な掛け声とともに、楽しい時間を過ごしてください。
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