性暴力をなくすにはどうすればよいのか? 性暴力被害当事者、法律家、研究者、教員、市民活動家など、様々な立場からの提言と、「自分ごと」として考える37名の読者からの投稿も含めた、「希望」に向けたメッセージ。[特集趣旨]本誌では、これまで性差別・性暴力を考える上で、「個」を問うこと、すなわち、自分自身を問うことの重要性を指摘してきました。とりわけ、男性の場合、自分自身の性の加害性や暴力性を問い、そのあり方を変えていくことが現在の男社会を変えていくことに繋がると主張してきました。その意味で、ジャーナリスト・広河隆一氏の性暴力事件は衝撃でした。広河氏はイスラエルのキブツ(共同農場)での体験の中からパレスチナ報道を始めた、自分自身の感性と思考を問い、他者の痛みや苦しみに寄り添う人権派ジャーナリストとして知られていたからです。彼の発行していた『DAYS JAPAN』では日本軍「慰安婦」問題や暴力ポルノの特集が組まれたこともありました。一方、2019年3月に相次いだ性暴力裁判における加害者への無罪判決、また、元TBS社員を告発した伊藤詩織さんに対するバッシングは、ジェンダーギャップが121位(153ヵ国中・世界経済フォーラム発表・2019.12)という日本の国際的評価と相まって、日本社会の女性の人権状況が惨憺たるものであることを示していました。このような状況に対して、女性たちが中心となって伊藤詩織さんへの支援運動やフラワーデモなどの日本版#MeToo運動、そして、性交同意年齢の引き上げや不同意性交処罰などの刑法改正を求める取り組みが行われてきました。特にフラワーデモは、被害者自らが被害を語り、その場で聞いている人たちが#with youとしっかりと受け止める、自然発生的な運動として全国へ広がっています。本特集でも被害者の声を「自分ごと」として受け止めたいと思います。「自分ごと」の自分=「個」とは、「男」と「女」だけでなく、LGBTなど多様な性をもつ「個」です。「男とはこういうもの」「女とはこういうもの」という固定観念・偏見・二元論から脱して「個」として生きること。それは本誌がテーマにしてきた男の性の加害性・暴力性からの脱却にも繋がります。そして、そのためには被害者への共感が何よりも必要とされています。自分を愛するからこそ、他者を愛することができる。自己を肯定するからこそ、他者も肯定できる。性暴力のない社会にするために、「自分ごと」として考えていきましょう。
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