通常1-5営業日で発送：精神分析についての本といえばまず必ずフロイトが登場する。もちろんフロイトと並んでその本の著者が影響を受けた他の分析家の説もしばしば前面に出てくる.著者は自分が準拠するその分析家の学説を紹介し、出来ることならそれを批判的に解説することによって独自の立場を打ち建てたいと思うわけだ。かく言う私自身その}人だった。私が書いた精神分析についての本の一つには、その序言の冒頭に、「本書は私がフロイトと取っ組んで格闘の末に生まれた」と書いてある、.きっと私は単にフロイトを受け売りする者と見られたくはなかったのだろう。もちろん私と違ってもっと素直にフロイトの説を祖述する著者達もたくさんいる.、またフロイト以外の精神分析家たち、例えばエリクソンやクライン、最近ではコフート、ウィニコット、ビオンなどを主として前面に立てて自分の説を開陳する者もいる。こういう傾向は日本人の著者に特に多いような気がするが、しかし外国人の場合も根本的にはそう変らないのかもしれない。ところで本書の著者はその点が非常に違っているのが面白い。著者はのっけから症例をぶつけてくる。その症例を読者は著者とともに考え、理解し、治療に一段落がつく