ロシアン・ナイト~2008ルツェルン音楽祭ライヴ! 驚きのラフマニノフ、そして『火の鳥』『テンペスト』 グリモー、アバド&ルツェルン祝祭管の快演! 話題のスーパー・ヴィルトゥオーソ・オーケストラによる注目の映像作品。トップ・ソリストやトップ室内楽奏者たちのプレイはもちろん、客席のポリーニやブーレーズの姿も映し出される映像は実に豪華ですが、音質が非常に優秀なので、眼を閉じて音だけ聴いても十分な満足を得られるクオリティに仕上がっているのもポイントです。 プログラム最初の『テンペスト』はアバド得意の演目だけに、細部まで克明に描き抜かれた表情が印象的ですが、興味深いのは14年前のベルリン・フィル盤に較べてさらに演奏が引き締まり、かつダイナミックになっている点。前回もライヴですが、今回のアバドはいっそう元気になっているかのようです。 続くラフマニノフでは、グリモーの美しくセクシーな姿が実に魅力的。演奏も素晴らしいもので、軽やかな運動性と気持ちのこもったロマンティシズムが両立したソロとオーケストラの一体感。特に第2楽章での深く憧れに満ちた透明な抒情は忘れがたいひと時を与えてくれます。 最後は『火の鳥』。アバドはこの演奏の36年前に、同じ1919年版を用いてロンドン響とセッション録音していましたが、今回の演奏はあらゆる点でそれを上回る仕上がりとなっています。頻出するソロのすべてが面白く、また、トゥッティは決してにごらずつぶれず、透明な空気感の中にシャープな稜線を描く山岳写真のような解像度の高さが実現されているのです。奏者ひとりひとりが指揮者への深い共感を示すこのオケならではの見事なサウンドといえるのではないでしょうか。
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