《2025年2月》改訂
【本文より抜粋】この小説は、幼少の頃から空想癖のある二十三歳の弘樹が、忘れかけようとしていた過去、その赤裸々な二十八の断片を連綿と振り返り、みずからの人生の謎をつぎつぎと解き明かしていく、ある悲運の少年の生き様の物語なのである。
主な登場人物◇滝田弘樹（主人公）◇清里雪絵（薬局の娘）◇星井由紀子（女占い師）◇リサ（異国の女）他
【あとがきより】この小説は、概ね想像の世界で構成されたフィクションでも、いわゆる純粋な私小説でもなく、正確にいうとオートフィクションというカテゴリーに当てはまる作品となります。弘樹という名の少年が主人公として登場し、中学に入学した頃から、大学生活にいたるまで、全二十八話によって構成され、それぞれがさまざまなエピソードとともに綴られる一方、小説の主な舞台は、新潟市と日本海の海岸周辺、千葉市周辺、渋谷周辺などとなっています。とくに前半部分は、言うなれば「悲劇的なもの」あるいは「自虐的なもの」を訴求しています。しかし結末に向かって、主人公がさまざまな困難に直面する一方、幼少期からかかえてきた悩みが一つひとつ解決していくといった、現実世界という範疇で、いわば「主人公の成長とその軌跡をえがいた物語」という体裁をとっています。オートフィクション――すなわち実際にあった出来事を語っている部分と、作者の実体験をもとにした想像の世界やまったくの仮構の話が混在している構成や粗筋となり、その箇所がどうであって、かたやそれぞれの割合がどの程度なのか、といったことは、ここでは曖昧なままにあえて割愛させていただきます。いかにも実話のように記されている話が実は虚構の世界であって、またその逆も有り得るということです。《数行省略》一方、この小説の時代背景となる一九六〇~一九七〇年代といえば、携帯電話やパソコン、さらにはインターネットという技術が世の中になかったか、まだ普及していない時代で、そのような理由により、人々の生活様式から暮らしの隅々にいたるまで、現代とは様相がだいぶ違うものであったことをつけくわえておきます。
＊本書「故郷のない少年」はこの度新規出版する紙書籍〈ペーパーバック：12.7×18.8cm／本文文字サイズ9.5pt〉です。＊表紙・中頁等のすべてのビジュアル要素〈計34点の画像等〉は本書の出版において作成されたオリジナルな素材（原画原作等）です。＊その他：400字詰め原稿用紙概算260枚（空白含む）