〈西与開板〉冨士野往来［富士野往来］（天明4年・2種）【判型】大本1冊。収録順に縦256・258粍。【作者】白馬山人書。【年代等】天明4年3月書・刊。［江戸］西村屋与八板。また別に［江戸］亀屋文蔵板（後印）あり。【備考】分類「往来物」。早印本の西村屋与八板も抄録した。『富士野往来』は、古写本および江戸初期刊本の多くが大本1冊で、歴史科往来の先駆と目されるもので、鎌倉時代初期の建久4年（1193）に行われた富士野の巻狩と、そこで起こった曽我兄弟の仇討ちを題材にした文書や書簡を集めた古往来。一般に（1）廻文状（卯月11日付・源頼朝より）、（2）副文状（卯月12日付・蔵人大夫朝輔より右近大夫将監へ）、（3）着到状（5月13日付）、（4）配分状（5月日付）、（5）巻狩の規模・実況を報ずる状（5月日付・藤原正行より平景時へ）、（6）小次郎・禅師房召捕りの執達令状（5月晦日付・平景時より曽我太郎へ）、（7）小次郎等逮捕不能の陳情状（5月晦日付・曽我太郎より平景時へ）、（8）曽我兄弟の狼藉についての問い合わせ状（5月28日付・平景時より安達盛長へ）、（9）曽我兄弟仇討ちの状況並びにその成敗を報ずる状（5月28日付・安達盛長より平景時へ）の合計9通を収録。底本の天明4年板『〈西与開板〉冨士野往来』は、以上の本文に「三国第一富士山図説」「源頼朝公家譜」の前付や、「天神七代畧数」「地神五代年数」や武鑑風の記事である「中興武将治世年数・九代将軍執権北条略伝」等の頭書を施したもの。なお、天明板の筆耕、白馬山人跋文は、『富士野往来』の作者を自笑禅師とするが未詳。